僕の安眠と暴走族と核兵器


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どうやら今年も一部の成人式は大荒れしたらしい。

成人式における暴走族のやんちゃっぷりはもはやこの時期の風物詩と化している。

二十歳にもなって何をやっているんだと呆れ返る人もいるだろうが、別に僕はこの場で彼らに文句を言ってやろうというわけではない。

ただ、僕は「暴走族」という言葉を目にすると、いつもこんなことを思い出すのだ。

 

暴走族の爆音は僕の子守歌だった。

 

7歳くらいのときだろうか。

北朝鮮が核兵器製造を目的に核施設を稼働していることが発覚し世間を騒がせた。

核施設の映像がテレビでしきりに流されていたことを今でも鮮明に覚えている。

当時、僕は「核」という言葉にとても敏感な子供だった。

小学校の図書室に唯一置いてあった漫画「はだしのゲン」の影響である。

ガラスが全身に突き刺さり、皮膚が剥がれて垂れ下がり、目玉が飛び出す・・・

原爆による被害を描いたこの漫画は、小学生の僕にトラウマを植え付けるのに十分だった。

ちょうどその時に核開発のニュースを聞いたものだから、そんな恐ろしい兵器を開発している北朝鮮は恐怖の対象でしかなかった。

 

テレビで大人たちが北朝鮮について真剣な表情で議論しているところを見る内に、次第に僕は北朝鮮が当時住んでいた仙台に核爆弾を落とすのではないかと疑い始めた。

今考えれば突拍子もないことではあるが、その時は本気で考えていたのだ。

奴ら、東京の前にまずは手始めに仙台を狙うに違いない・・・・。

そんなことを考えると、夜も眠れなかった。

ヘリコプターや飛行機が風を切る音を聞くたびに、僕は恐怖ですくみ上った。

今日こそ核爆弾が落とされ、僕は皮膚がただれてゾンビのように呻き声を上げながら水を求め、やがて事切れて真っ黒に焦げた死体になるんだ・・・

そんなことを想像しては、布団の中で一人泣いていた。

 

そんな時、ある「音」が僕を救ってくれた。

 

バイクの爆音だ。

迷惑にも暴走族が夜中に走り回っていたのだろう。

だが、僕にとって暴走族の爆音は「救い」だった。

彼らの音は夜を支配していた。

彼らの音は自信に満ち溢れていた。

彼らの音からは、恐怖や怯えを微塵も感じさせなかった。

「例え誰かが核爆弾を落とそうとしても、俺がやっつけてやるから安心して寝ろ」

自己主張の塊みたいなその爆音は、そう僕に笑って言っているように聞こえた。

僕はその爆音を聞くと、いつも安心して眠りにつけたのだ。

 

たしかに暴走族なんて集団は一般人にとって迷惑な存在でしかない。

毎年のように起こる成人式の騒ぎを不快に思う方も少なくないだろう。

ただ、一見迷惑でしかない集団でも、1人の少年の心を恐怖から救ってくれることもあるのだということは知ってほしい。

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